映画『ルートヴィヒ』

 実際のルートヴィヒ2世がどういう人物だったかについては詳しくないのですが、この映画に描かれたルードヴィヒには、ほとんど共感できませんでした。
 芸術至上主義という自らの理想を貫くことが出来ずにワーグナーを追放し、好きな男性がいたのに王としての体面を守るために彼の思いを受け入れず(でも身近には置いておくのです)、しかし一方で、結婚は王の努めと言いながら、女性との婚約は破棄してしまう。政治家としての手腕にも乏しかったようで、台頭するプロイセンに抗しきれず、治世の後半には統治者としての実権をほとんど失ってしまったようです。そして、美食と、例の城造りに耽るようになる。
 あらゆる事に中途半端なんですね。

 男性との情事を楽しみつつ結婚して子作りもし、軍備を増強しながらワーグナーの音楽も愛し、オーストリアやフランスとがっちり組んで台頭するプロイセンビスマルク)と対峙する、といったようなパワフルな生き方は出来なかった。狂王ルートヴィヒと言われたりしますが、ちゃんと「狂」えてはいない。神経が細すぎる人物なのです。
 そういう意味では王家の長男に生まれてしまったのがそもそもの不幸の始まりと思えなくもないですが、彼が残したノイシュヴァンシュタイン城は、ディズニーのシンデレラ城のモデルになったそうですし、バイエルン地方の重要な観光資源にもなっているのですから、功績はあった、のかも知れません。