松原惇子『ひとり家族』(文春文庫 1999年)

 人は家族の一員である前に個人であるはずだ。だから、すべての制度は個人単位で考えられ機能されるべきである。夫婦だって切りはなされる前のベトちゃん、ドクちゃんではないのである。個人と個人の集団であるはずだ。それを「家族」というひとつの単位でくくること自体、まちがっているというものだ。人の単位はひとりである。ゆえに社会の最小単位は「家族」ではなく「個人」であるべきである。(P.227)

 感情の高ぶりがそのまま出てしまって、文章が上手いとはとても言えないのだけれど、言っていることの本筋は間違っていないと思う。この本の単行本版が出版されたのが1993年(平成5年)、税制にしろ社会保障制度にしろ、これだけ人の生き方が多様になってきた時代に、この国では未だに「個人」ではなく「世帯」を基準にした制度設計が残されたままである。