映画『ノア 約束の舟』

 映画の前半、CGありバトルシーンありで、いかにもハリウッド大作的なつくりなのですが、後半、洪水が起きてから映画のトーンが一変します。それまでは神に選ばれた善人(のはず)のようだったノアが、洪水後、その神の使命を全うしようとするあまり、狂気の人のようになってしまいます。箱舟の内部という閉じられた空間が舞台であるのも相まって、ピリピリした心理劇が展開するのですが、それがどうも成功しているとは言い難い。
 『ブラック・スワン』のダーレン・アロノフスキー監督なだけに、そういう色を出したかったのかもしれませんが、前半の勢いのまま最後まで押していって、単純にノアの家族と動物たちが助かってめでたしめでたし、という話にしたほうが素直に楽しめたと思うのでした。